どうも、ねじまきです。
2025年8月は村上龍の『五分後の世界』を読んでいきます。
「五分後の世界」、学生の頃一度読んだことがあるので9年振りぐらいの再読ですが、記憶が薄れているので、戦争が絶えない今だからこそ読み直そうかなと。
長編にしては短めなので、村上龍を普段読まない方にもおすすめです。
※ちなみに9月は『わたしを離さないで / カズオ・イシグロ』の読書会を予定。
まだ未読の方も、ファンの方もお気軽に参加してみてください。(後述)
個人的な感想
・・・あえて話の筋というよりも脇に逸れたような雑感を箇条書きで。
もちろんネタバレありなので、未読の方はご注意を。
・なぜか加わっている冒頭のシーン、当時ランニングガチ勢だったこともあって結構覚えている
・混血の人がいっぱいいてどこか違う世界にいると気づきつつある感じ、日本だからできる設定だよなと。
・村上龍の小説にあるあるなんだけれど、今作もゲイ(オカマ)が登場。この時代からLGBTQ+を描いていたのは流石。
・そしてもちろんドラッグも。
・ドビュッシーのシーン、わりと印象的な流れだけど、昔過ぎるせいかあまり記憶になかった
・みんな現代から着てきた”フワフワで保温性の高いジャケット”に感心しているのかわいい。
・村上龍独特の、”カギ括弧を使わない会話”がやっぱり巧い。『限りなく透明に近いブルー』ほどではないけれど。
・3章の徐々に”今の時代”が見えてくる感じがゾワゾワする。
日本人が26万人に減っていて、アメリカを相手に戦争を続けている世界線。
・4章はほぼ戦闘シーン。それこそ映画の『プライベート・ライアン』冒頭みたいな感じ。
・五感の使い方がさすが。特に嗅覚と触覚。
Music
「雨の庭 / ドビュッシー」 『版画』より
ドビュッシーなんか、なんぼ聴いてもいいですからね・・・。
ドビュッシーに感動している主人公の様子を見て、まわりの反応が変わってくる様子がめちゃ良い。
小田桐は耳を澄ましてみた。他の混血児も小田桐とサワダのやりとりに注目していて部屋は静まり返っていた。ピアノは、例の蟻のからだにトンボの羽をつけたような虫の羽音よりもやや大きなボリュームでここまで届いていて、やはり非常に透き通った音色だった。
何か発光するものとして目に見えるような音。
2:35~あたりからの、
雨が降った後、少し光が差してきて、一斉に草の青い匂いが立ちこめてくる感じ。
村上龍がクラシック音楽とロックを語ると敵う者はいないなと。
Quotes:
印象に残った文章をいくつか引用。
(※残酷な描写もあるので、苦手な人は飛ばしてください)
一つはっきりしたことは、日本中が混血児だらけになっているらしいこと、その混血児達が日本人に、いや彼らの言葉にすると、準国民というやつになりたがっているということだ。
弾丸が命中するという感じではなかった。男の後頭部に埋め込まれた小さな火薬のかたまりが爆発したようだった。
視界は全部オレンジ色になってついに夕焼けの中に引きずり込まれた、今太陽に焼かれている、という意識の中で、いろいろなものが降ってきた。土砂、小石、木の枝、カゴやシャベルやバケツの破片、それに人間のからだのある部分とその切れ端、小田桐の目の前に、サラミソーセージそっくりの色と大きさで、黒焦げになった足か腕が転がってきて、それはまだプスプスと音を立てて燃えていた。バーベキューで焦がしすぎた脂肪分の多いソーセージみたいだと思ったとたんに胃がけいれんして嘔吐した。汚いな、と若い混血児が言った。
蛋白質が焼ける匂いがすでに泥の中にも染み込んでいて、小田桐は再びパニックに襲われ、穴を出て走り出せばそれですべてが終わるという強迫的な誘惑にとりつかれてしまった。発狂の誘惑は喉の奥と背筋に貼り付いて、オルガスムの前兆によく似ていた。それは制御できないものだった。
小田桐は喉の渇きに耐えられなくて、兵士の胸からあふれる鮮血をほんの少しだけ口の中に入れた。生のレバーの切れ端を噛み砕いたようにドロリとして水分を補給した感じはしなかったが、それでも喉の奥の呼吸が難しいほどの渇きは僅かな間、収まった。
主人公・小田桐による資本主義(現代)批判のセリフもしびれる。
みんなの共通の目的は金しかねえが、誰も何を買えばいいのか知らねえのさ、だからみんなが買うものを買う、みんなが欲しがるものを欲しがる、大人達がそうだから子供や若い連中は半分以上気が狂っちまってるんだよ、いつも吐き気がしてあたり前の世の中なのに、 吐くな、自分の腹に戻せって言われるんだから、頭がおかしくなるのが普通なんだよ、ここは、違う、
「ボクらより、あんたの時計はきっちり五分遅れているよ」
参考になったリンク集
個人的に参考になったリンクやをいくつか貼っておきます。
そういえば、ねじまきブログで村上龍のエッセイや対談を紹介してたなと。
・『おしゃれと無縁に生きる』/村上龍のエッセイを読んだ感想(幻冬舎文庫)
・『村上龍と坂本龍一 21世紀のEV.Café』対談集を読んだ感想
Q&A
個人的に気になる質問をいくつか。
「ねじまきBBS」やコメントでの回答お待ちしてます。
Q1. 4章終わりまでで、一番好きな場面は?
→ やっぱり血なまぐさい戦闘シーンは見所。
あと主人公が兵士に惚れかける描写も個人的に◎
Q2. 村上龍の他の作品を読んだことがありますか?
→ 小説、エッセイ含め、わりと色々読んでいるかなと。
そういえば最新作『ユーチューバー』はまだ読んでない。
Q3. この本が好きな人におすすめの別の作者の本は?
→ 開高健の『輝ける闇』とかベトナム戦争ものはハマるはず。
小説が続いているので、ルポルタージュ的なものの読書会をやるのもいいかもね、と思ったり。
8月は広島・長崎・終戦記念日ということでやっぱり”戦争”が頭から離れない付きだけど、今のこの時期にこの本を選んでよかったなと改めて思う。
・・・ということでそろそろこの辺で。
次回は20日に配信予定。
6章終わりまで (P219まで) 読んでいただければと。
ほかに感想・気になった点、読書の進捗なども、
掲示板「ねじまきBBS」やコメントでお待ちしてます!
9月は20周年記念を迎えた『わたしを離さないで / カズオ・イシグロ』を読みます。
終盤の”あの展開”はもう10回ぐらい読んだかもしれないけれど、
「通し」で読んだのは1,2度ぐらいしかないので、
せっかくの機会ということで再読しようかなと。
※ちなみに、9月は”イシグロマンス”ということで、
映画ニュースレター『Rotten Letter』にて、
カズオイシグロ原作映画『わたしを離さないで』と『遠い山なみの光』2本立てで見る予定。
映画好きの方はこちらもどうぞ。
・メインのニュースレター「ねじまき通信」も近日中に配信予定です。