どうも、ねじまきです。
ほぼ一カ月遅れての配信になりますが、『コインロッカーベイビーズ』の最終回配信です。
本のニュースも後半にありますので、よければ読んでみてください。
雑ですが、軽いネタバレありのざっくり感想を。
・中盤から急にミステリー調になったり、
芸能の裏側だったり、刑務所だったり、無人島だったり場所やスタイルが色々変化するのが興味深い
・ダイバー記事など、違うスタイルの文章が入ってきたりするのも◎
・船酔いの描写など細かい部分もやたらと生々しい。
→船まわりの取材とかはめちゃくちゃきちんとしている印象
(長崎県佐世保市出身だから、自身の海での経験もあるのかなと)
・リレーのシーンとか、前読んだはずなのに全然覚えてなかった
・刑務所~船のシーンってこんなに長かったっけ?
・ワニの高速道路のシーンよ…。
(結局ガリバーはなんだったんだろう?)
・赤ん坊を埋めるシーンが象徴的で、色々深読みできそう
・どの登場人物もクレイジーで、ニヴァがまともに見えるレベル
Quotes:
印象に残った文章の引用をいくつか。
さなぎはいつ蝶になるのだろうか。巨大な繭はいつ飛び立つのだろうか。糸や繭が、あの彼方の塔が崩れ落ちるのはいつか。ハシは道路の中央分離帯で横になった。左手だけが呼吸している。植込みの隙間からヘッドライトが一瞬目を刺す。土の匂いを嗅ぐ。乾ききってポロポロで何の匂いもしない。眠れ! ハシは自分に命令した。
結局、不必要ということなんだ、それにつきるんだ、ハシは酸の臭気に目を赤く腫らして言った。僕は自分が誰からも必要とされていないのを知っている。僕はずっと必要とされなかった、だから、他人を必要としない人間になろうと思ったんだ、でもねニヴァ、僕だけじゃなかったんだよ、必要とされてる人間なんてどこにもいないんだよ、全部の人間は不必要なんだ、それがあんまり寂しかったから僕は病気になったんだ、きのうの夜ね、僕の血がどんどん地面に吸い込まれていったよ、
「あんたらみんな、いつか鰐に食わせてやるわ」 その夜にアネモネはキクのクリスマスプレゼントを解いたのだった。プレゼントは本でオムレツその全て、というものだった。一八二ページにオムライスの作り方が載っていた。キクはその部分を赤い線で囲んでいた。アネモネは卵を二百個買ってきてオムライスを作り始めた。
その音を憎むことはできなかった。ハシは母親を許した。さらに老作家と孔雀とそれらを映し出してくれた半透明の粘膜にも感謝した。粘膜と血管と暗い穴と硬く丸めた舌を持つ、目の前の女を、殺したくない、と思った。僕の力を抜いてくれ、血を全部抜いてくれ、あの硬い拘束衣を着せてくれ、この女を殺させないでくれ。
…僕は何一つ手に入れていない、ぼくは変わっていないんだ、まだコインロッカーの中にいる、肌を腐らせたまま箱の中に閉じ込められてる、盲導犬が僕の匂いに気付いて吠えてくれるまで待っていることはもうしないぞ、それでは何をしたらいいんだ。
全体的にぶっ飛んだ小説で、
なおかつ緩急つけて最後まで書き切るのがさすが。
主人公二人の葛藤や行動に、ついていけないけどグイグイ読み進められてしまう村上龍の文章力。
薬島のサイバーパンクな雰囲気も最高だし、実はいろんなジャンルに影響を与えた作品なのかも。
とにかく、村上龍自身のこの言葉が響く小説だったなと。
だが、社会的怒りは「しょうがない」という言葉では消えない。
変質して、どこかに沈殿する。
『すべての男は消耗品である。』より
村上龍の作品はエッセイ含めそこそこ読んできたけれど、
やっぱり『コインロッカー』か『五分後の世界』『イビサ』あたりが一番好き。
まだ読んでない『歌うクジラ』とか新作の『ユーチューバー』もそのうち読みたい。
・『村上龍と坂本龍一 21世紀のEV.Café』対談集を読んだ
本のニュースまとめ
個人的に気になった本のニュースをいくつか。
・講談社、23年11月の当期益24%減 原材料費かさむ - 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC206EH0Q4A220C2000000/
・電子書籍の取り分についてのお話
https://note.com/publishnote/n/n0a38d1fb024a
・【新潮流】今、面白い本は「一人出版社」から生まれるhttps://newspicks.com/news/9545450/body/
・本を買う時、どこで新刊情報を入手してるの?書店員さんのアンケートから見えてくる、SNS発信の重要性
https://togetter.com/li/2324827
しずかなインターネット
3月の配信予定
2024年3月の読書会は、
『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク / ジョン・スラデック著』を読んでいきます。
(※冗談みたいなタイトルですが、ほんとの題です。)
読書会といいつつ、3月末(※ちなみに来週)に
僕が感想を書いて終りになりそうです・・・。
忙しくて手が付けられてなかったのですが、
四月からちゃんと読書会らしくしますね。
・・・ということで4月の読書会のお知らせも。
この本はみんなで読もうね。
4月の読書会
安倍公房の作品が、一気に電子書籍で配信され話題になった3月。
そして2024年は”安倍公房生誕100年”だそうなので、
この機会に日本文学を代表する安倍公房を手に取ってみてはどうでしょう??
確か『箱男』や『笑う月』を読んだのは高校の時以来、
『砂の女』は社会人になってから(読書会にも参加した)ぐらいで、
それ以来、ひさびさの安倍公房体験。
映画化も予定されているので、今このタイミングで再読できるのは楽しみ。
204ページと比較的読みやすいし、1か月かけてみんなで読むので、
まだ読んでない方はもちろん、既読の方もお気軽にどうぞ。
(※中旬・月末の二回に分けて読書会の進捗配信予定です)
今月末配信の「ねじまき通信」では、
国際状況やテクノロジー について書く予定です。
今ならまだ配信に間に合うので、お気軽に登録を。