どうも、ねじまきです。
10日になったので、予告どおり、
短編小説「菜食主義者」の感想的なニュースレターを配信します。
個人的な感想
毎度のごとく、箇条書きで思ったことをざっくりと。(※ネタバレ注意)
・文化圏が近いのと翻訳がうまいおかげか冒頭からスッとなじんで読みやすい文章。
・夢の中は「サイレントヒル」みたいな感じで頭の中に映像が再現されるぐらい妙にリアル。
・家族が無理やり食べさせるシーンは映画『パラサイト』の役者さんで再現されたのは自分だけ…?
・”漢方薬”を飲んだのはちょっと意外で、と思いきやすぐに吐き出すのもびっくりした。
・料理の描写がうまいので、韓国料理食べたくなったな。
(この本の感想としてこれを書くのはピュアすぎるかもだけど…)
・セックスレスになって、という言及もあったりで フェミニズム小説と読む人も多そう。
・一般的に、韓国と日本、どちらがヴィーガンに優しい国なんだろう?
・ヴィーガンが当たり前に許容されている国の人が読むと、また印象も大きく変わりそうだけどその辺はどうなのかなと。
・夢の中のあれこれは、自分の暴力性を直視して傷んでいる自分の深層心理みたいな。
・「食べること」= 「暴力」
・革製品を捨ててしまうほどの徹底ぶり、僕の何人かいるビーガンの友達もそこまではしてないかなぁ。
・色んなものに「抵抗」の姿勢を示して疲弊している立場の人を書いた小説、主人公を助けるにはどうすればよかったんだろう?
・・・・雑になりましたがとりあえずこの辺で。
印象に残った文章
個人的に印象に残った場面や文章をいくつか。
私にはまったく、異様なことに対する耐性がなかった。 (夫の言葉)
しかし私はすべてが無意味だと直感した。いかなる怒りや説得も、彼女を動かすことはできないだろう。もはや私ひとりで何とかできるような段階ではなかった。
また夢を見たわ。
誰かが人を殺して、他の誰かがそれをまんまと隠してくれたんだけれど、目が覚めた瞬間に忘れてしまったの。わたしが殺したのか、それとも殺されたのかを。殺したのがわたしなら、この手で殺したのは誰だったのだろう。
口の中に唾がたまるの。精肉店の前を通るとき、わたしは口をふさぐ。舌のつけ根か 上がって唇を濡らす唾のため。唇の間からもれ出そうな唾のため。
少しでも眠ることができるなら。たったの一時間でも意識から逃れることができるなら。数 えきれないほど何回も目が覚めて、裸足でうろつく夜の家は冷えきっている。冷えたごはん、冷めたスープのように冷たいの。黒い窓からは何も見えない。
不眠症的な描写も巧いなと思った。
わたしが信じるのはわたしの胸だけよ。わたしはこの胸が好き。胸では何も殺せないから。手も、足も、歯と三寸の舌も、視線さえ何でも殺して害することのできる武器だもの。しかし 胸は違うわ。この丸い胸がある限り、わたしは大丈夫。
Musik
毎回本の内容に関連した曲を紹介するコーナー。
菜食主義者を読んでいて、やっぱりこの曲が頭に流れてましたね・・・。
『Meat Is Murder / The Smiths』
And the flesh you so fancifully fry
おまえがきまぐれに調理する肉はIs not succulent, tasty or kind
ジューシーだとか美味しそうとかいうものではないIt’s death for no reason
不条理な死And death for no reason is murder
不条理な死、それは虐殺だ
牛の苦しそうな鳴き声が聞こたりもする一曲。
ボーカルのモリッシーはヴィーガンとしてかなり有名だったり。
参考になったリンク集
読むうえで色々調べたことや豆知識など。
・ハン・ガンさん、ノーベル賞で講演 「言語は私たちをつなぐ糸」|好書好日
「世界はどうしてこんなに暴力的で苦しいのか」
「同時に、世界はどうしてこんなに美しいのか」
韓国語で行った講演で、ハンさんは自身を執筆に向かわせてきた動力は、「この二つの問いの間の緊張と内的な闘争」だったと話した。
「温かい血が流れる体を持つ私が感じる生々しい感覚を電流のように文章に吹き込もうとし、その電流が読む人に伝わると感じる時には驚き、感動する。言語が私たちをつなぐ糸だということを、生命の光と電流が流れるその糸に、私の問いがつながっているという事実を実感する瞬間に。その糸につながってくれるすべての方々に感謝する」と結んだ。
・この本が出版された頃は、 韓国では犬食はまだ合法だった時代。
→ 韓国“犬食”禁止へ 伝統の食文化か動物虐待か ユン・ソンニョル大統領夫人で愛犬家のキム・ゴニ氏も反対 波紋広がる | NHK
・京都のおすすめヴィーガン料理屋
色んな方向に話が飛んでますが、
これも好き放題できるニュースレターの良さということで笑
京都のビーガン料理屋さんとしては、
新風館にある『本と野菜 oyoy』がほんとにおすすめ。
ハンガンさんの小説も、しっかり置いてありました=
・アフター6ジャンクションのノーベル文学賞受賞後の特集、
ハン・ガンさんプロフィールや初めに読むべき本などを語っていて良かったです。
おわりに
あちこちに話が飛んであんまり大したことは書けませんでしたが、
ハン・ガンさんの代表作、ということでさすが内容でした。
この文字数でグッとあの世界観に引き込ませるのはすごいし、
読んでて辛くなるけれど、自分のことのように思えるのも不思議な感じ。
オチもそうきたか・・・という感じで、みんなと感想を話したくなる短篇でした。
よければこのニュースレターに返信、もしくはコメント欄、掲示板 などに読んで思ったことを書いて頂けると嬉しいです。
次回は12月20日に「蒙古斑」を配信予定なので、
20日までに読んで頂けると幸いです。
そして 2025年1月 の課題本は、
ミシェル・ウェルベックの『ある島の可能性』をみんなで読む予定。
最後にもう一つお知らせ。
12月11日(もう明日ですね!)から、
ガルシア=マルケスの『百年の孤独』のNetflixドラマ版が配信予定。
僕も時間があるときに少しずつ観ようと思ってます。
掲示板作ってみたので、よければつぶやいてみてください。
→『百年の孤独』Netflix版感想用掲示板
ではよい読書ライフを。
※メインのニュースレター「ねじまき通信」も配信中です。お気軽にどうぞ。