『灯台へ』 読書会(第1回)
ラムジー夫人の"意識の流れ"
どうも、ねじまきです。
ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』のニュースレターでの読書会。
※なかなか書く時間が取れず、全3回配信の予定でしたが、
今回は2回(中旬・月末)配信となります。
今回の配信は、第一部 最後(P225) までの振り返りです。
個人的な感想
・「意識の流れ」という文学的なワードが有名すぎて手を出せてなかったけど、読み始めるとかなり読みやすくてびっくり。
頭の中の思考をそのまま垂れ流すような文体。
・児童ファンタジーの『バーティミアス』とか『夜は短し歩けよ乙女』が好きなら間違いなくハマりそう
・これで悪人の「意識の流れ」がずっと続くのだったらキツいけれど、
ラムジー夫人が基本的に良い人なので、人のあたたかみにナチュラルに触れられている気がするのが良い。
・ところどころ人間臭さや意地悪さ、癖のつよさが見え隠れする演出も◎
・同じ意識の流れの文章で、突然別の登場人物に切り替わるのはさすがに初めは慣れなかった。当時でこれはかなり斬新だったんだろうなと。
・のちにすぐその行動を起こした登場人物の心理描写を、その人の視点で語られるのとかはかなり効果的。(P61とか)
・英語だと主語・述語とかどう表現されているのかも気になる。
・全体的にわりとストーリーの流れはゆっくり目、だけど読ませてくれる不思議さ。
(もう中盤なのに、みんなまだ灯台へ行かない笑)
・フェミニズム的な思想がわりと出てきている
・夫人、やたらと結婚を勧めるのがちょっと煩い。
・潮でブローチを無くすシーン、視点の移動が忙しいくてすごい
・タンズリーの大音声はどう受けてとめていいかわかないことが多い(文学的教養があればもうちょっと楽しめるんだろうけれど)
・P223の辺りとか台詞回しと心の声の使い分けが全体的にうまいなぁと。
印象に残った文章
個人的に印象に残った場面や文章をいくつか。
梨の木に魅入られるように立ちつくしていると、リリーの頭のなかにはふたりの男のさまざまな像が降るようにわいてきて、その思考の流れをたどるのは、まるで一本のペンでは筆記しようにもしきれない早口の声を追うようなものだった。とはいえ、自分のなかから出てくる声には違いなく、それは問われもしな いのに、個々には自明にして不変ながらたがいに相容れないことを言いつのり、じきに梨の木の裂け目やこぶまでが、それに比べたら永久不動のものに思えてきた。(P47)
「意識の流れ」についてメタに書いているようで面白い。
夜が白み、朝の陽がカーテンのすきまから射し、ときおり庭で鳥が暗くころには、リリーはやけっぱちの勇気をかき集めて、奥さまのおっしゃる「世の習い」は、わたしにだけは当 てはまらないのです、と言い張る。もう泣きつかんばかりに。わたしは独りでいるのが好きなんです。自分らしくありたいんです。結婚にはむいていないんです。(P91)
リリーほんとにいい役してる。
自分というのは、くさび形をした闇の芯みた いな、他人には見えないものだ。夫人は編み物をつづけ、あいかわらず背筋をぴんと伸ばしていた。こういう姿勢のほうがくつろげるのだった。この、いろいろな付属物 を捨て去った後の自分というのは、摩訶不思議な冒険も自由自在だ。(p113)
夫人の芯のあるところがいい。フェミニズム抜きにしても、ヴァージニア・ウルフが女性に人気なのがわかる。
器の封がはじけ飛んで歓喜に 満たされながら、自分は幸福を知りえたのだと思う。ごく繊細で、烈しいまでの幸福。 陽がいよいよ薄れていくなか、光の指は荒波をすこし明るい銀に染め、海から碧の色 が消えてゆくと、寄せくる波はきれいな檸檬色にきらめき、曲線を描いて盛りあがっ ては浜辺に砕け、すると、夫人の双眸はいきおい恍惚の色にあふれ、交じりけのない 喜びの波が打ち寄せてその心の底に広がり、そうしてこう感じるのだった。わたしは充たされている! 満ち足りている! (P118)
参考になったリンク集
読むうえで色々調べたことや豆知識など。
・ヴァージニア・ウルフについてあなたが(おそらく)知らなかった10のこと - The Millions(English)
P135のサム・ホールの歌について。
エリック・クラプトンやジョニー・キャッシュもカバーしているほど有名な、古くから伝わる英国のフォークソング。
こういう小ネタみたいなものは本を読むだけじゃ見逃しがちなので、
ニュースレターで補足していきたいなと。
現代文学的に重要な作品、としてよく挙げられるので、
なんか難しいことをいわねば、と思ったけれど、ふつーにダラダラと感想書いちゃいましたね。
これはみんながどう読んだか・楽しんだかがとても気になる一冊。
今回はちょっと雑な内容になってしまいましたがこの辺で。
次回は10月末配信予定なので、それまでに最後まで読んで頂けると幸いです。
ではよい読書ライフを。
・ジョージ・ソーンダーズの短編小説講義本『ソーンダーズ先生の小説教室』
・11月のナノライモ(全国小説執筆月間)に向けて本を書く準備をしている。
※メインのニュースレター「ねじまき通信」も月末に配信予定なので、よければ読んでみてください。


