『逃げ道 / ナオミイシグロ』読書会〈第1回〉
魔法使いたち・くま・ネズミ捕りⅠ まで
どうも、ねじまきです。
ちょっと遅れましたが第1回目のニュースレターでの読書会をお届けします。
まずはそれぞれ短編の振り返りと感想から。
魔法使いたち
舞台はイギリスの「ブライトンビーチ」。
英国の大御所DJ・ファットボーイスリムの25万人が集まったブライトンの
伝説的ライブが思い浮かんだのですが、(偶然、先週に京都でライブを見てきました!)
本来はこんなに素敵なビーチ。一度は行ってみたいなと。
ビーチのシーンって、映画も含め印象的なものが多い気がします。
「フェイブルマンズ」「ノッキング・オン・ザ・ヘヴンズ・ドア」ももちろん、
カズオイシグロが携わった黒澤明のリメイク『生きる LIVING』でも
海のシーンは記憶に残るものだったなぁ。
おそらくカズオイシグロ(父)と行ったことあるんだろうな~と空想を巡らせながら読んでました。
そんでこの物語、
とにかく冴えない占い師ピーターのキャラに同情してしまうなと。
思っていたより老けていた女性にがっかりしていく様子とか、
意気地なしなところとか。
それに対してアルフィは健気な男の子で
"でも、最後にみんなで踊るだなんて、いいアイデアだよね。
アルフィはそう思った。
なんで、みんなああいうことをもっとしないんだろう。
どうして踊らないの かな?”
とか素直さが良い。再婚した親、という設定はちょこっとほのめかす程度なのが巧いなと。
ラスト以降、病気の男の子アルフィとピーターの人生がどう展開していくのかが気になる終わり方。
じん、とくる短編だったなと。
くま
2つ目の短篇。
オークションで巨大なくまを買ったあたりの流れから、
不思議なくまが動き出して二人の仲を・・・という話かと思ったけどそうじゃなかった笑
妻がくまに入れ込み、自分を愛してくれなくなっていじける夫。
カップルの間に赤ちゃんが産まれると、
犬は自分がかまってもらおうと意地悪をすることがある(逆もしかり)
・・・というのををふと思い出した。
後半、妻が自分を愛する理由として
「価値のない無用の長物を好きになる習性がある」と勘違いしていショックを受ける主人公もなんかイケてない感じがいかにも人間臭さがあってよかった。
終盤は「彼女自身がくまに似ている」という言葉から、
自分こそ相手のことがわかっていなかった
とその”隔たり”にちゃんと気づくことができ、希望が持てる終わり方で良かった。
僕は結婚生活なんて送ったがことないし、
今後も(ゲイなので)送ることもないだろうけど、
妙なリアリズムを感じて楽しめた。
全体的にヘミングウェイの「雨の中の猫」のような作品だなと。
登場人物やページ数も少なくミニマルな作品なのに、
しっかり伝えたいことを収められているのがすごい。
ネズミ捕りⅠ
舞台は中世ヨーロッパを思わせる王宮の話。
子供の頃に読んだ『デルトラ・クエスト』のネズミの街をふと思い出したり。
カズオイシグロ氏の『忘れられた巨人』の影響もあるのかな?
日本だとネズミはそこまで見かけないですが、
欧米だとゴキブリ並みに嫌われているネズミ。(病気も媒介するので当然なんだけど)
ねずみにされるがままの「ばあさん」、確かにちょっと気持ち悪い。
主人公の素性もよくわからず、
”いけすかない王宮”のためになぜネズミ捕りをしているのかも気になるところ。
ラスト、
まさか主人公の男がああなるとは思ってなかったので個人的には意表をつかれた。
Ⅱをまだ読んでないけれど、
本当に自分の毒で死んでしまったのか、そうでないのか。
謎の王女エセルは何をしようとしているのか。
私生児がうんぬんは物語に関わるのか。小さな三日月は何なのか?
・・・次回に続く。
音楽プレイリスト(Spotify)
物語に出てきた「虚空のスキャット(Great Gig In The Sky)」や「ぼくはくま」
など五曲チョイスしてみました。
今後も読書会の音楽はここに追加していくので、
よければこちらから登録して聞いてみてください。
Question:
僕からの問いを3つ。
コメントなどで答えて頂ければ嬉しいです。
Q1. 今回の三つの短編でどれが一番好みだった? (その理由も)
→ 僕は「魔法使い」がFavorite。
キャラがたっていて、ブライトン様子も魅力的に書かれていたから。
Q2. どのキャラクターに一番感情移入できた?
→「魔法使いたち」のピーター。
とことんダメなところと、年齢も近いから。
Q3. 今、他に読んでいる本は?
→『現実とは? / 藤井直敬』
現実とは何か?という問いに、
メタバース専門家や言語学者、能楽師などが答えていく一冊。
次回配信の「ねじまき通信」でも”リアルと仮想空間” について書く予定なので
ぜひ登録してみてください。
Questionを3つ書いてみましたが
肩ひじ張らず、思いのままに答えて頂ければ。
一言感想だけでも、一問だけでも全然OKです。
コメントや感想、解釈の違いなどについても気軽に書いて頂ければと。
・・・ということで次回の配信は10月20日。
その時までに「ネズミ捕りⅡ」の231ページまで読んでいただければ、
次のニュースレターも楽しめるかと。
はじめての読書会はそんな感じで終わろうかなと。
ねじまき





こんにちは、viewbooです
ブライトンビーチの風景は、天気の良い日に自転車で訪れる、浜大津の琵琶湖岸に少しだけ似ているかな。実は昨日の午後には、そこのベンチで課題書籍を読んでいました。風が強く、ちょっと寒かったけど
とりあえず、三つの質問に答えておきます。
Q1. →「ネズミ捕りI」
ここまでの、現代が舞台の作品は何れも今一つピンと来なかったのですが、これは面白い。
なお、中世ファンタジー版シンプソンズのDisenchantmentの絵柄や世界観を思い浮かべて、楽しみました
Q2.→「魔法使いたち」のアルフィ
本作の親からの過干渉とは異なる理由により、同年代の友達と外で遊ぶ機会はあまり無かった幼いころの思い出が脳裏に浮かんだという次第
Q3.→「地球の中心までトンネルを掘る」ケヴィン・ウィルソン
課題書籍の到着が遅れたので、手元にあったこの短編集を先に手をつけて、その後交互に読み進んでいます
では、とりあえずこれにて